バイヨンBayonとはクメール語で「美しい塔」を意味します。アンコール・トム遺跡の中央に位置する仏教とヒンドゥー教のミックスの寺院です。塔の数は49基あり、それぞれの四面に巨大な人物の顔が彫られていることで知られています。
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バイヨン寺院は、一時期は隣国チャンパに奪われていたアンコール・トムをジャヤヴァルマン7世王が奪還した戦勝記念として12世紀の終わりに建設が始められ、その後も時代ごとの王によって建築が引き続き行われました。
三層の構造を持ち、高さ43mの中央祠堂の第一層に二重の回廊が設けられています。
第一層
◆内回廊
長さ70m×80mの壁面に、乳海攪拌などヒンドゥー教の神話のシーンの浮き彫りがあります。13世紀の後半、バイヨンが仏教寺院からヒンドゥー寺院に変えられた時に彫られたものと言われています。保存状態はあまり良くありません。
デバターやアプサラ(踊り子)も彫られています。
Cambodia ’08 – 141 – Angkor Thom – Bayon by McKay Savage
◆外回廊
高さ3m、長さおよそ160m×120mの壁が3段に区切られ、チャンパ(現在のベトナム中部沿海地方)との戦争、宮廷の生活、当時の狩猟や市場の様子の浮き彫りが施されています。12~13世紀の生活の様子を活き活きと伝えるものです。
Bas-reliefs du Bayon (Angkor) by Jean-Pierre Dalbéra
チャンパとの戦いの様子。坊主頭で耳が長いのがクメール兵、三角帽子がチャンパ兵。
Bas-reliefs du Bayon (Angkor) by Jean-Pierre Dalbéra
豚の釜茹で、焼肉などの調理をする人々。樹上には猿がいます。
家庭での女性の様子。
Scène de marché (bas-relief du Bayon) by Jean-Pierre Dalbéra
市場の様子。頭上に大きく描かれた様々な種類の魚は、豊かな自然の恵みを表していると思われます。
第二層
Le Bayon (Angkor Thom) by Jean-Pierre Dalbéra
16の塔があり、いずれも四面に人面が彫られています。回廊のレリーフはヒンドゥー教のエピソードが彫られています。
第三層
テラスとなっており、巨大な四面像を間近で見ることができます。人面像の大きさは1.7m~2.2mです。この人面像の表情は一つ一つ異なり、「クメールの微笑」として有名です。
観世音菩薩の顔とも、ヒンドゥーの最高神ブラフマーの顔とも言われています。葉の飾りのついた冠は戦士の象徴であるために、神仏ではなく戦勝の王ジャヤヴァルマン7世を神格化したものであるという説もあります。
かつては中央にシヴァ神のシンボルであるリンガ(男根を象ったもの)が置かれていたと言われていますが、現在は仏像が安置されています。また、中央祠堂から仏陀の座像が発見されています。
次回の記事では、溶樹に侵食された廃墟の寺院タ・プロームをご紹介します!
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